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適正原価 ポイント解説!標準的運賃との違い・施行はいつから?

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2025年6月に成立した「トラック適正化二法」。業界団体からの強い要望で具現化された法案が成立し、多重下請け構造の是正やドライバーの処遇改善が図られるものとして期待されています。そして、その新たな施策の内、柱の一つとされているのが適正原価です。
適正原価について、標準的運賃との違いや、具体的にいくらになるのか、施行はいつになるのか、などについて解説していきます。

※当記事は、2026年5月20日時点の情報をもとに作成しています。

 

適正原価とは?

2025年6月に成立した「トラック適正化二法」に盛り込まれた施策の一つで、運送取引における運賃・料金を決定する際の基準となるもの。施行後、運送事業者・荷主は、国が示す適正原価に則り、適正原価を継続的に下回らないよう運賃・料金を決定していくことが求められます。

荷主についても、適正原価を支払わない場合は違反原因行為に該当するものとして是正指導の対象となります。

なお、適正原価の導入により、標準的な運賃は廃止されます。

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適正原価の導入の狙い・背景

業界団体や国が適正原価を導入しようとした背景には、運送業界が抱える構造的な問題があります。1990年の規制緩和以降、運送事業者が一気に増加。過当競争とともに、多重下請け構造ができあがり、実運送事業者の運賃が押し下げられるようになりました。運賃が押し下げられれば、ドライバーの収入も押し下げられ、こうした状況がドライバー不足を招く要因の一つになっています。

これまでも運賃や料金の目安を示したものとして標準的な運賃がありましたが、法的な拘束力がなかったことから、十分に機能しているとは言い難い状況でした。こうしたことから、今回新たに適正原価が導入されることになりました。

法的拘束力のある「適正原価」を導入することで、運送事業者のダンピングはもとより、荷主が運送事業者へ不当な運賃を要求することへの大きな抑止力になることが期待されています。

 

標準的な運賃と適正原価の違い

これまで運用されてきた標準的な運賃は国が示す運賃の目安であり、新たに導入される適正原価は法的拘束力を持つ運賃・料金決定時の最低基準となります。つまり、法的拘束力があるかないか、という点に大きな違いがあります。

施行後、トラック運送事業者や貨物利用運送事業者は、適正原価を下回る運賃・料金とならないようにすることが求められます。これに違反した場合、事業許可の更新等に影響する可能性があり、適正原価を支払わない荷主についても、違反原因行為に該当するものとして是正指導の対象となります。

・標準的な運賃は参考指標、適正原価は下回ってはいけない最低基準
・標準的な運賃は法的拘束力なし、適正原価は法的拘束力あり

 

適正原価の算定根拠

適正原価が何を根拠に算定されるかという点に関しては、「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」の条文中に記載されています。

(運賃及び料金に係る適正原価)
第九条の二 国土交通大臣は、貨物自動車運送事業に係る運賃及び料金について、燃料費、全産業の労働者一人当たりの賃金の額の平均額を踏まえた人件費、減価償却費、輸送の安全確保のために必要な経費、委託手数料、事業を継続して遂行するために必要不可欠な投資の原資、公租公課その他の事業の適正な運営の確保のために通常必要と認められる費用であって国土交通省令で定めるものを的確に反映した積算を行うことにより、貨物自動車運送事業の適正な運営を図るための原価を定めることができる。

出典:参議院「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」

算定根拠となるのは大きくは8つ。下記費用を反映し算出したものが適正原価になるということになります。

①燃料費
②人件費
③減価償却費
④輸送の安全確保のために必要な経費
⑤委託手数料
⑥事業継続に必要不可欠な投資の原資
⑦公租公課
⑧事業運営のために必要なその他経費

 

適正原価はいくらになるのか?

2026年5月20日時点で適正原価の金額感に関する確かな情報は出てきていません。ただ、全日本トラック協会の寺岡洋一会長が、2025年7月に行われたLOGISTICS TODAYの単独インタビューで、適正原価の設定ラインに関して「標準的運賃の95%を最低ラインぐらいに思っている」といった発言をしています。人件費や車両費が高騰している現状を鑑みれば95%は妥当だとし、適正原価がそのような水準で設定されることを示唆していました。

出典:LOGISTICS TODAY「最低運賃「27年度開始」、全ト協寺岡会長が強い意向」

 

適正原価を遵守しなければならない対象事業者

適正原価は、貨物自動車運送事業者も貨物利用運送事業者も遵守しなければならない規定となります。前述しましたように、例えば適正原価が「標準的運賃の95%」となった場合、その運賃を下回らないよう、貨物自動車運送事業者も貨物利用運送事業者も運賃設定をする必要があります。そうすると、貨物利用運送事業者は実運送事業者を考慮して「標準的運賃の95%」からさらに上乗せした運賃設定が必要になる、ということになります。

そして、荷主も適正原価を踏まえた運賃協議に応じなければなりません。荷主が不当に適正原価を下回る運賃を要求した場合は、違反原因行為に該当するものとして是正指導の対象となる可能性があります。

適正原価の遵守義務に関して、「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」に以下のように書かれています。

適正原価の遵守義務
トラック運送事業者は、自ら貨物を運ぶときや、他の事業者に運送を委託するときは、国土交通大臣が定める「適正原価」を継続して下回ってはならなくなります。
※ 貨物利用運送事業者についても同様に規制
※ 適正原価を支払わない荷主については、違反原因行為に該当するものとして是正指導を実施
※ 標準的運賃については廃止

出典:厚生労働省「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」

 

適正原価の施行はいつから?

2026年5月20日時点で確かな情報はありませんが、運賃・料金の審議や周知期間などを踏まえると、2028年度(2028年4月)からの施行が現実的だとする見方があるようです。

「トラック適正化二法」の公布は2025年6月11日でした。法律の公布後3年が施行の期限となるため、2028年6月までには施行されることとなっています。

なお、適正原価の告示は施行よりも前の段階で行われます。適正原価の具体的な運賃・料金や規定が公に示された後、十分な周知期間をもって施行となるのが想定されます。告示のタイミングについても確かな情報はありませんが、仮に施行を2028年4月とすると、少なくとも施行の1年前、2027年4月までにされるのではないかと考えられます。

 

適正原価施行を見越して重要となる運送事業者の対応

適正原価の導入後に関して、運送事業者が適正原価を下回る運賃で運送を続けた場合、行政指導の対象となるおそれがあります。そのため、運送事業者は荷主と粘り強く交渉をしていく必要があり、一方で適正原価の考え方に理解を示さない場合には、取引の継続自体を見直す判断も必要になるかもしれません。とはいえ、適正原価施行後も、荷主側で十分な認知が進んでいない可能性があります。まずは、適正原価の趣旨について、荷主に対して丁寧に説明し、理解を得ることが重要となります。

また、運送事業者は自社の原価(車両別・コース別・荷主別など)を把握しておくことも重要となります。適正原価がすべての運送事業者の事情や案件の事情に対応するものとは考えにくく、適正原価さえ上回っていれば採算割れすることはない、というようなものではないからです。あくまで適正原価は、運賃・料金の最低基準です。適正原価を上回っても、車両の減価償却費や積載率・稼働率によっては採算割れしてしまう案件も考えられます。自社の原価を把握した上で、適正原価を活用しながら運賃交渉をする、というのが重要になると考えられます。

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