2026年 物流業界の現状と課題 -なぜDXが必要なのか-
目次
物流業界は、2024年問題への対応をはじめ、ドライバー不足や燃料費高騰、法改正への対応など、多くの課題に直面しています。こうした状況の中で、年々重要度が高まっているのがDXです。物流業界の現状と課題を整理するとともに、DXが求められる理由について解説していきます。
物流業界の現状
物流業の市場規模は約32兆円
物流は、国民の暮らしや経済活動を支える重要な社会インフラであるとともに、日本の主要産業の一つとして位置しています。国土交通省作成の資料『物流2024年問題と物流革新』によると、トラック運送業・倉庫業などを含む物流業界の主要業種の営業収入合計(令和4年度)は約32兆円。全産業での営業収入合計は約1,578兆円で、物流業界はそのうち約2%を占めています。
また、約32兆円のうち、トラック運送業が約20兆円を占めており、その割合は約63%にのぼります。物流業界の中では、トラック運送業が群を抜いた営業収入を誇っています。
約223万人が物流業に従事している
先ほどご紹介した資料によると、物流業界の主要11業種の従業員数は計約223万人となっています。全産業では約6,723万人で、約3%の人が物流業に従事していることになります。
国内の貨物輸送量の約9割をトラックが担う
トラック運送業が物流業界の中で群を抜いた営業収入を誇っていることからも分かりますように、国内の貨物輸送の多くはトラックで行われています。その分担率(※)は、公益社団法人全日本トラック協会作成の資料『日本のトラック輸送産業-現状と課題-2025』によると91.7%で、2位以下を大きく引き離しています。2位は海運で7.4%、以下は鉄道で0.9%、航空で0.02%と続きます。
(※)トンベース。
出典:公益社団法人全日本トラック協会『日本のトラック輸送産業-現状と課題-2025』
運送会社の99%以上が中小企業
国内の輸送モードのメインはトラック輸送であり、その運送を担うトラック事業者の99%以上は中小企業となっています。さらに内訳を見ると、約71%が従業員20人以下の小規模事業者で構成されています。
出典:公益社団法人全日本トラック協会『日本のトラック輸送産業-現状と課題-2025』
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物流業界の課題
ドライバー不足の深刻化
物流業界の積年の課題となっているのがドライバー不足です。この背景には、他産業と比べて劣る賃金や長い労働時間などがあるといわれており、中小型トラックドライバーの場合、年間所得額は全産業平均と比べて約14%低く、年間労働時間は全産業平均と比べて372 時間長い、とされています(公益社団法人全日本トラック協会『日本のトラック輸送産業-現状と課題-2025』より)。
また、日本は世界に類を見ないほどの超少子高齢化社会であり、生産年齢人口自体が減ってきていることも運送業界にとってはマイナス要因となっています。他産業も売り手市場となっている中で人材獲得競争に勝っていかなければならず、物流業界にとっては厳しい状況となっています。
出典:公益社団法人全日本トラック協会『日本のトラック輸送産業-現状と課題-2025』
時間外労働の上限規制に伴う輸送力不足への懸念(2024年問題)
物流業界の枠を超えて、いまや社会課題として扱われているのが2024年問題です。2024年に時間外労働の上限規制がトラックドライバーにも適用されたことに端を発したものですが、2024年以降も引き続きの対応が不可欠な課題として立ちはだかっています。
物流業界はただでさえドライバー不足なうえ、ドライバーの労働時間が減ってしまえば、輸送力が減少してしまうのは火を見るよりも明らかです。
ドライバーの労働時間が減るということは、ドライバーの収入も減ってしまう可能性があることを意味しています。そのため、ドライバーが他産業に流れていってしまうことも懸念されています。
物流2024年問題とは?運送事業者/荷主/社会への影響や求められてくること
燃料費・人件費の高騰
昨今の燃料高騰は物流業界にとって、非常に大きな打撃となっています。物流・運送事業者にとって燃料費は人件費に次いで支出割合の大きいコストであることから、特に実運送を担う事業者にとっては、死活問題であるといえます。
当然、燃料高騰分をそのまま荷主に請求できればいいのですが、容易ではないのが実情です。株式会社帝国データバンクの物価高倒産に関する調査データ(2025年度版)によると、全体963件のうち91件(9.4%)が運送業だったとしており、燃料高騰分の価格転嫁がうまくいかずに倒産するケースが多くなっていることがうかがえます。
出典:株式会社帝国データバンク『「道路貨物運送業」の倒産動向(2025年度)』
業務の属人化と低生産性
物流業界では属人的な業務が数多くあります。例えば、車両に荷物を割り当てる配車業務です。配送効率に直結するものであるとともに難易度が高く、ベテラン担当者の経験と知見に依存しやすい業務となっています。倉庫においても、在庫場所の決定や出荷指示、イレギュラー対応など、属人化しやすい業務は数多くあります。
さらに、物流業界では、まだまだFAXや電話を中心としたアナログな業務が多いのが実情です。受発注のやりとりが電話・FAXで行われることが多く、これが管理側の業務の生産性向上を妨げる要因にもなっています。
非効率・不合理な商慣行
非効率・不合理な商慣行も課題となっています。特に課題に挙げられるのが、長時間の荷待ちです。長時間の荷待ちは、ドライバーの長時間労働や輸配送業務の生産性を阻む要因になっており、国土交通省によるアンケート調査では、平均1時間34分の荷待ちがあったとしています。他にも、不当な運賃の据え置きや、付帯作業の強要なども物流現場では問題になっており、非効率・不合理な商慣行が現場にはいまだ残っているのが実情です。
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今後の輸送力不足を見据えた行政の動き
2024年、物流関連2法の改正
今後想定される深刻な輸送力不足を前に、政府が推し進めたのが物流関連2法の改正です。2024年4月に成立しました。
2法のうちの一つ、物流効率化法では、荷主にも物流効率化のための取り組みを努力義務として課すなど、抜本的な制度改革が見られました(2025年4月より施行)。それまでは物流効率化に関する規制の中心は物流事業者側にあり、荷主に対し取り組みを強く求める制度はありませんでした。
また、取扱貨物重量9万トン以上の荷主を特定荷主として指定するとともに、特定荷主には一般の荷主よりもさらに強い規制的措置を課しています。2026年4月以降、特定荷主は、物流統括管理者(CLO)を選任することや、国が示す判断基準を踏まえた中長期計画を作成することなどが義務となっています。
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新物効法|25年4月から物流効率化の取り組みが努力義務に!
物流効率化法|26年4月から特定荷主に加わる措置(義務)の内容
2025年、トラック適正化2法の成立
トラック適正化2法は、業界団体からの強い要望で具体化された法案であり、2025年6月に成立しました。「許可更新制の導入」「再委託の制限」「適正原価の導入」「白トラ規制の強化」といった主に4つの柱で構成されており、多重下請け構造の是正やドライバーの処遇改善に寄与するものとして期待されています。
中でも特に注目されているのが適正原価の導入です。運送取引における運賃・料金の基準を設け、その基準を継続的に下回らないよう運賃・料金を決定することを求める制度です。適正原価の導入に関しては、2028年6月までの施行が予定されています。
【関連記事】
適正原価 ポイント解説!標準的運賃との違い・施行はいつから?
2026年、取適法による取引規制の強化
2025年5月に成立した中小受託取引適正化法(取適法、旧下請法)により、新たに発荷主から運送事業者への運送委託が「特定運送委託」として適用対象に追加されることになりました。元請の運送事業者から下請事業者への運送再委託に関しては、以前より旧下請法の適用対象となっていましたが、発荷主から元請の運送事業者への運送委託は旧下請法の適用対象外でした。
「特定運送委託」が適用対象となった背景には、燃料価格の上昇分を運賃に転嫁しにくい、付帯作業分の料金を請求しにくいなどといった運送事業者が不利な立場に置かれやすい商慣行があります。適正運賃に基づいた荷主・運送事業者間の取引を定着させる狙いから、適用対象が拡大されることになりました。
取適法は2026年1月1日より施行されており、「特定運送委託」に該当する取引を行う発荷主は、取適法の規定に則った取引を行う必要があります。
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【取適法】「特定運送委託」が適用対象に!対象類型をわかりやすく
物流業界におけるDXの重要性とその理由
生産性向上への対応
ドライバー不足や時間外労働の上限規制による拘束時間短縮などの影響から、物流業界は生産性向上への対応・取り組みが不可欠となっています。輸送力不足による社会全体への影響も懸念されていることから、政府も法整備を進め、課題解決を図っています。
例えば、物流効率化法では、荷待ち時間の短縮であればバース予約システム、積載効率の向上であれば配車システムの導入を物流効率化の取り組み例として示しており、ITシステムの活用が推奨されています。
ITシステムの活用によって現場の生産性向上が進み、限られた輸送力を守る持続可能な物流体制が構築されていくことが期待されています。
燃料費・人件費の高騰への対応
昨今のコスト高騰の影響から、物流・運送事業者は利益を確保していく積極的な動きが必要となっています。その中で、輸配送の生産性向上に向けた取り組みも一つですが、やはり重要となるのは運賃交渉です。ただ、物流業界では価格転嫁が十分に進んでいるとは言い難い業界です。荷主に運賃改定を受け入れてもらうには、粘り強く交渉することが求められます。そのためには、ITシステムを活用して各案件やコースごとの原価や採算性を正確に把握し、客観的な根拠に基づいて交渉を進めることが重要です。こうした運賃改定を見据えた動きを、限られた人員でかつマルチタスクの中でしていかないといけないといった状況も、DXが求められる理由の一つです。
属人化からの脱却
物流業界では、配車担当者や運行管理者など、管理者の人材が不足していることも大きな課題となっています。特に配車業務は、前述のとおり難易度が高く、かつ属人化しやすい業務です。そのため、後継者の育成や業務の引き継ぎが難しいといった側面があります。こうした状況を改善するためには、業務プロセスを見直し、担当者だけが持つ暗黙知を可視化・標準化することで、誰でも対応できる業務へと変えていくことが重要です。配車業務のようなコア業務を特定の担当者に依存したままでは、事業継続にも影響を及ぼしかねません。そのため、業務の標準化やナレッジの共有を目的として、DXを推進する企業が増えています。
コンプライアンス強化への対応
物流・運送事業者に対する、ドライバーの労務管理の徹底や働き方改革への要求が年々厳しくなっています。さらに物流関係法令も続々と改正されており、遵守しなければならない法令も増加している状況にあります。こうしたことから、紙や手作業による管理では対応が難しくなっており、管理者の負担も増すばかりです。
ITシステムを活用することで、管理業務を標準化し、記録漏れや記載ミスなどといったヒューマンエラーを防止するとともに、管理者の負担を軽減することも可能となります。昨今の経営環境の変化やマンパワーに頼るリスクからも、DX推進が不可欠となりつつあります。
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