初心者向けかんたん物流コラム
2025年5月16日に成立した改正下請法により、発荷主から元請事業者への運送委託が新たに下請法の規制対象として追加されることになりました。これまで元請事業者から下請事業者への運送再委託は対象であったものの、発荷主から元請事業者への運送委託は対象とはなっていませんでした。
今回の改正は、荷主・運送事業者、双方において重要な改正です。影響を受ける可能性のある事業者においては適切に対応できるよう事前に備えておくことが必要となります。
※2025年6月20日時点の情報を基に記事を作成しております。
目次
2025年5月16日、公正取引委員会と中小企業庁は、「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」が参議院本会議で可決・成立したことを発表しました。
今回の改正では、新たに発荷主から元請事業者への運送委託が下請法の対象取引に追加され、物流業界にとっても非常に大きな意味を持つ改正となりました。これにより、運送事業者の価格転嫁が適切に行われることや、不当な荷待ち・荷役の防止などに寄与することが期待されます。
なお、「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」は改正を機に、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(中小受託法)」に名称が変更されました。
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改正下請法によって何が変更されるか、荷主・運送事業者の取引にどのような影響があるのか、という点について解説していきます。
今回の改正下請法の主な変更点としては、「運送委託の追加」「従業員基準の追加」「協議を適切に行わない代金額の決定の禁止」「事業所管省庁の主務大臣への指導・助言権限付与」「手形払等の禁止」などの5点です。順に解説していきます。
出典:公正取引委員会 中小企業庁「下請法・下請振興法改正法の概要」
今回の改正により、新たに発荷主から元請事業者への運送委託が規制対象に追加されることになりました。元請事業者から下請事業者への運送再委託に関しては、以前より規制対象となっていましたが、発荷主から元請事業者への運送委託は下請法の規制対象外でした。
改正下請法の施行後、発荷主(親事業者)には、下請法における「親事業者の禁止行為・義務」が適用されるようになります。なお、下請法で規定されている「親事業者の禁止行為・義務」は以下の通りです。
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出典:公正取引委員会 中小企業庁「下請法・下請振興法改正法の概要」
下請法は前提として適用基準が設けられています。事業者間の取引が下請法の規制対象となるかどうかを判断する基準になるものであり、適用基準に該当する取引においては下請法が適用されることになります。
この適用基準において、今回の改正では「従業員基準」が追加されることになりました。これにより、従業員が300人を超える親事業者と従業員が300人以下の下請事業者との間の取引(特定運送委託・製造委託・修理委託の場合は従業員数300人が基準、情報成果物作成委託・役務提供委託の場合は従業員数100人が基準)においては、今後下請法が適用されることになります。
従来であれば、上の表にありますように資本金で適用されるかどうかが判断されていましたが、今回の改正により従業員数でも判断されるようになりました。
出典:公正取引委員会 中小企業庁「下請法・下請振興法改正法の概要」
今回の改正により、「協議を適切に行わない代金額の決定の禁止」が、親事業者の禁止行為に追加されました。具体的には、上の表にありますように、下請事業者から価格協議があったにもかかわらず応じない、価格決定において必要な説明をしない、などして一方的に代金を設定する行為が禁止されます。
運送取引に置き換えると、コスト上昇により運送事業者から運賃交渉があったのにもかかわらず応じない、標準的な運賃(標準的な運賃は今後廃止・代わって適正原価が導入される予定)といった参考指標があるのにも関わらず合理的な理由なく一方的に運賃を決定する、などといった行為が禁止されるということになります。
改正前は、買いたたきなど、不当に対価を引き下げる行為に関しては禁止行為としてありましたが、コスト上昇分を勘案せず一方的に価格を決定する行為は禁止行為として明示はされていませんでした。エネルギーコストや原材料費など様々なコストが高騰しながらも、下請事業者のコスト上昇分の価格転嫁が十分に行われていない現状から、今回改めて追加されることになりました。
出典:公正取引委員会 中小企業庁「下請法・下請振興法改正法の概要」
今回の改正により、面的執行の強化が図られることになりました。具体的には、公正取引委員会、中小企業庁、事業所管省庁の連携により、違反事業者への監視を強めていこうというもので、事業所管省庁の主務大臣に指導・助言権限が与えられることになりました。
さらに、「報復措置の禁止」の対象に事業所管省庁の主務大臣が追加されることになりました。これまで、下請事業者が違反性のある事象について事業所管省庁(トラック・物流Gメン)に申告した場合に関して、「報復措置の禁止」の対象とはなっておらず、下請事業者の不利益を想定した手当てが不足していることが課題でした。
施行後は、下請事業者が違反行為について事業所管省庁(トラック・物流Gメン)に申告したことで親事業者から報復を受けた際には、「報復措置の禁止」といったさらなる下請法違反が親事業者に加わることとなります。
出典:公正取引委員会 中小企業庁「下請法・下請振興法改正法の概要」
下請法の対象取引において、手形払等が禁止となりました。下請事業者を保護する観点から、手形に加え、電子記録債権やファクタリングなど、下請法で規定される支払い期日(60日)までに支払いができないと見られる支払い手段についても禁止となります。
今回の改正においては、発荷主と元請事業者間の運送委託に下請法が適用されることになります。一方で、直接的な取引関係でない着荷主と実運送事業者間の取引に関しては、今回の改正では適用されないといったことが読み取れます。
ただ、実際には荷待ち・荷役・付帯作業などに関わる問題は、着荷主と実運送事業者との間で発生することが多く、本来であればこの取引にも下請法を適用することが望ましいという声もあります。
実際、昨年に公正取引委員会と中小企業庁が立ち上げた「企業取引研究会」でも、このような議論が行われていたことが明らかになっています。しかしながら、今回の改正ではその適用には至りませんでした。
改正下請法は2026年1月1日からの施行が予定されています。なお施行までの期間で、関係法令や運用基準などが順次示されることが想定されます。
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