初心者向けかんたん物流コラム
目次
ホワイト物流とは、国民生活や産業活動の基盤となっている物流網を安定化させる事を目的に、国土交通省・経済産業省・農林水産省(以下国土交通省など)などが旗振り役となって進めている政策で、正式名称はホワイト物流推進運動です。
この運動は、深刻なトラックドライバー不足の中でも、国民生活や産業活動に必要な物流を安定的に確保する事を目的に、「トラック輸送の生産性向上・物流の効率化」や「女性や60代以上の運転者等にも働きやすい」、よりホワイトな労働環境の実現に取り組む運動です。国土交通省などは、証券取引所に上場する企業や各都道府県の主要企業の代表者に対して、ホワイト物流推進運動への参加要請文章を送付しています。これらの取組みによって令和4年6月30日時点で1429社がホワイト物流推進運動に賛同表明しています。
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図1で示されているようにトラックドライバー人口は、ピーク時である平成7年の98万人から平成27年には76.7万人まで減少しています。また図2で示されている様に、全産業に比べ高齢化が著しく、15歳から34歳までの若いドライバーが少ないことも特徴です。
トラックドライバーの減少によって、1、「宅配便や引っ越しが不便になる」2、「食品などの物流の減少や品揃え不足が発生する」3、「運賃単価の上昇による、商品やサービスの値上げが発生する」などの影響が発生しております。このまま放置すれば、国民生活や企業の経営に好ましくない影響が生じる可能性があると考えられています。
トラックドライバー不足の背景には、その労働環境も一因と考えられています。図3〜図5で示されているように、出荷元や納品先での荷待ち時間が長い事による長時間労働や、積み込み・積み下ろしなどの荷役作業による肉体的負担が考えられます。これら荷待ち時間や荷役作業時間の削減には、出荷元や納品先において、物流業務を抜本的に効率化する事が必要不可欠です。
国土交通省などの資料によると、日本の物流には、いまだに様々な「ムリ、ムダ、ムラ」が存在していると指摘されています。そのような課題に対して具体的にどのように取り組んでいけば良いのでしょうか?「ホワイト物流推進協議会」の資料を引用し具体的な改善策をご紹介致します。
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ホワイト物流推進運動へ参加するには、ホワイト物流推進運動事務局が用意する「自主宣言様式フォーマット」をホームページからダウンロード、記入し提出する必要があります。自主行動宣言の必須項目、推奨項目について、ホワイト物流推進運動事務局のホームページから引用し整理致します。
ホワイト物流運動の必須項目として、「取組方針」、「法令遵守への配慮」、「契約内容の明確化・厳守」への同意が必要です。
・取組方針
事業活動に必要な物流の持続的・安定的な確保を経営課題として認識し、生産性の高い物流と働き方改革の実現に向け、取引先や物流事業者等の関係者との相互理解と協力のもとで、物流の改善に取り組みます。
・法令遵守への配慮
法令違反が生じる恐れがある場合の契約内容や運送内容の見直しに適切に対応するなど、取引先の物流事業者が労働関係法令・貨物自動車運送事業関係法令を遵守できるよう、必要な配慮を行います。
・契約内容の明確化・厳守
運送及び荷役、検品等の運送以外の役務に関する契約内容を明確化するとともに、取引先や物流事業者等の関係者の協力を得つつ、その遵守に努めます。
ホワイト物流推進運動の推奨項目は、必須項目に加えて自社でさらに取り組むかを検討し任意で盛り込む事ができます。盛り込んだ推奨項目を公表するか否かは任意となっており、また臨時変更が可能です。
働き方改革関連法の施行により2024年4月1日以降、自動車運転業務に従事している方々にも年間の時間外労働時間の上限が960時間に設定されます。今回の法改正では、刑事罰も導入され、左記に違反した場合には6ヵ月以内の懲役又は30万円以下の罰金に処されます。これらの厳しい法律改正の背後には、慢性的な長時間労働による労働者への健康被害が原因の1つと推測する事ができます。
厚生労働省が公表している、令和3年の「過労死等の労災補償状況」によると、自動車運転従事者における脳・心臓疾患の労災請求件数は150件、労災決定件数は53件となっており、全ての職業分類の中で請求・決定件数共が最も高くなっています。
今回の記事では、国土交通省などが推進する、ホワイト物流推進運動について解説しました。深刻なトラックドライバー不足や労災補償状況などの数値を見ると、業務効率化による従業員への負担軽減が急務です。2024年4月からは、働き方改革関連法が施行され、刑事罰を含む罰則制度も導入されます。ホワイト物流推進運動に賛同する取り組みを通じて、現在の業務フローを見直し、必要に応じた効率化を図っていくことが必要でしょう。
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・国土交通省自動車局貨物課「ホワイト物流」推進運動担当(2022).「ホワイト物流」推進運動ポータルサイト.国土交通省.
https://white-logistics-movement.jp.(参照2022-8-14)
・国土交通省自動車局貨物課、経済産業省商務サービスグループ物流企画室、農林水産省食料産業局食品流通課(2019).「ホワイト物流推進運動」のご案内と参加のお願い.国土交通省.
https://www.mlit.go.jp/common/001284400.pdf . (参照2022-8-15)
・「ホワイト物流」推進運動事務局(2019).「ホワイト物流」推進運動について(ご賛同のお願い).国土交通省.
https://white-logistics-movement.jp/wp-content/themes/white-logistics/docs/session_document_region.pdf .(参照2022-8-15)