【社長コラム】

ロジスティクスAI 戦略のポイント

AIと従来型システムの重要な違いとは ~輸配送の現場を例に~


From:朴成浩


最初に、お礼とお詫びを申し上げます。


先日の年始挨拶について、大変、多くの方からご返信、コメントを頂きました。予想外の反響の大きさに非常に驚いています。皆様、本当にどうもありがとうございます。


輸配送の現場で、かつて経験したことのない「不気味な変化」が起こりつつあることを多くの方が感じ、不安に思われているのですね。


荷物の「質」が変わり、トンキロは増えないのに輸送「量」だけがどんどん増えていく。人はいなくなる一方なのに、一体、誰が運ぶんだ?


改めて大変な状況に向き合っていることを痛感します。


予想を大きく上回る反響を頂いたため、いまだ皆様に返信できずに申し訳ありません。この場で改めて感謝を申し上げます。


さて、私たちに寄せられる質問を見ると

「AI」とは結局、何なのか?

今までのコンピュータープログラムとどう違うのか?

ということについて関心が高いようです。



従来型のコンピューターで処理できない業務とは



いわゆる「AI型」ではない、今までのコンピュータープログラムには決定的な弱点がありました。

人間が分からないことはできない

ということです。


何か、システムのプロジェクトに関わったことのある方はよくご存じだと思いますが、何かの業務をコンピューターにやらせようとした場合、「手順を明確にする」ということが今までは絶対に必要でした。


たとえば、在庫の引き当て処理を考えてみましょう。ある商品を100個、出荷依頼を受けた場合、出荷できるかどうかは倉庫にある商品の数量から、すでに他の出荷に引き当てられている数量を引いて、残った数量が100個以上あるかどうかを調べれば判断ができるわけです。


つまり、出荷可能かどうかの判断には、誰がやっても同じ結果が得られる明確な手順がある、ということです。これが「手順を明確にできる」ということです。


これがもし、

100個出荷できるかどうか、どうやって判断すれば良いのかよく分からない。

倉庫に100個以上在庫があっても出荷できる日もあればできない日もある。

その判断は勘と経験を積んだベテランでないとできない。

というようなことになっていたら、どうでしょうか? システム化は到底、無理ですよね。



手順が複雑な業務はAIで対応を



ところが、実際の人間の仕事の中にはこんな風に手順を明確にできない業務もたくさんあるわけです。特に、ロジスティクスの現場には、そういう手順を明確にできない仕事が多くあります。


「配送先条件と効率を両立する上手な配車組み」や「在庫の過不足を引き起こさない適切な発注」などはその最たるものですね。


こうした、手順を明確化できない仕事、いわば「フローチャートで表現できない仕事」は、従来型のコンピュータープログラムではお手上げで、今までベテランの勘と経験に依存するしかなかったわけです。


一般的に、次のような特徴を持つ業務は、まず間違いなく「手順を明確化できない」、つまり、従来型のプログラム開発ではシステム化できない業務と言えるでしょう。



・その仕事はベテランにしかできない

・初心者に業務手順を教えることは困難

・見て、やって、覚える、というやり方でしか習得できないため 業務の習熟には時間がかかる


こういう、手順が明確ではない仕事を、言ってみればコンピューターが「いろいろと考えて」上手にこなせるようにする。これが今、「人工知能」と言われている、新しいタイプのコンピュータープログラムなのです。


今までは、手順を明確にできない、ベテランにしかできない仕事はシステム化するのは不可能でした。しかし、AI技術が実用的になってきた今、この状況は変わりつつあります。初心者でも一瞬でベテラン並の判断ができるようになる。こういうことが実現できる時代になってきたわけです。


(とはいえ、囲碁や将棋はともかく、日々ルールが変化する実業の世界において、AIが経験豊富で優秀なベテランに完璧に追い付くのはまだまだ難しいものがあります。しかしそれでも、未経験者でも体調が悪い日のベテラン程度には仕事がこなせる、あるいは、あまり優秀ではない経験者よりは全然マシな仕事ができるようになる。そういうことを実現している企業と、一部の熟練者に頼り切りになってしまっている企業、どちらが危機に強いか? あるいは、どちらが事業機会にあって業容を拡張し、成長していけるのか? 言うまでもないですよね)



++朴成浩


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