ロジスティクスAI 戦略のポイント
From:朴成浩
「良い話を聞いた」シリーズ!というわけではないですが、オバマさんの広島演説には心動かされるものがありましたね。
私が取っている新聞は原文と訳文を並べて書いてくれていたのでじっくりと読むことができたのですが、いや、本当にオバマさんは演説の名手です。
大事なことは、中高生でも分かるような平易な言葉で、短く、印象的に言う。だからと言って、いたずらに論旨を単純化せず構成を工夫して理路の説明にも心を砕く。
聞く人の知性に対して、深い思いやりと敬意を持って書かれた演説だということがよく分かります。
「歴史的」とはいえ、米国大統領からすれば遠い海外で話す内容ですよ? そう考えると、本当に頭が下がりますよね。
実はちょうど今週末、広島で開催される日本ロジスティクスシステム学会の全国大会で講演させて頂く機会があるので、平和記念公園には是非行ってみたいと思います。
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さて、たしかに素晴らしい演説でしたが、人々はもちろん、オバマさんの文章力に感動したわけではありませんよね。
この演説が多くの人の心を動かしたのはなぜでしょうか?
オバマさんの演説はテキストとしても素晴らしい名文であったわけですが、多くの人の心に一番、響いた点はやはり、核なき世界を実現したいというオバマさんの「思い」だったのではないかと思います。
核なき世界を実現したいというオバマさんの意志は終始一貫しています。筋が通っているわけですね。このことは、その意見に賛成の人にはもちろん、反対の人にさえ重要です。言動に筋が通っていれば、その言動に賛成はできなくても、なぜその人がそういう振る舞いをするのか、は理解できるからです。(そして理解できれば止揚の道が開けます)
その人の言動の根っこには、どのような「思い」があるのか?
実はこれ、AI時代にこそ、深く考えなくてはいけない最重要事項なのです。言い換えましょう。AI時代に重要になるのは、
そのシステムの根っこには、どのような思想があるのか?
ということです。ちょっとここで立ち止まって考えてみて下さい。
今までのシステムと違う、AIやビッグデータを活用したシステムで一体、私たちは何をやりたいのでしょうか? あなたは一体、何を期待しているのでしょうか?
ビジネス分野における、この種の新しいシステムに対する期待は、人間に代わって適切な判断をしてくれる、ということですよね。人間では実現が難しい、安定した質の高い判断、つまり、私たちは、
・精度の高い、良い判断ができる
・数多くの条件(たとえば顧客の時間指定を守るなど)に見落としがない
・誰でも同じレベルでブレのない判断ができる
というようなことを期待しているわけですよね。
条件を見落とさないことや、誰がやっても同じ結果を得られる、ということはよく分かります。(与えられた条件の下では)間違いを犯さず、いつも同じレベルの結果を出す、というのは、コンピューターが最も得意とすることです。
問題は、何を持って「良い」とするか?という点です。
先週の話につながりますが、産総研の辻井先生が認められるように、現状、コンピューターは自分でモラルを獲得することができません。
何が良くて、何が悪いのか? システムの目的としてはそもそも何を目指すべきなのか? これは、人間が注意深く「インプット」してあげないといけないわけです。そうしないと、数多くの無責任な人たちによって差別思想を教育されて暴言を連発したあげく停止させられてしまった人工知能「Tay」のようなことになってしまいます。
多くの「エクセレントカンパニー」で、基幹システム以上の高度なシステムの開発がたびたび失敗するのは、実は、ここに原因があります。
これらの企業では、システム開発にあたっては長い時間をかけて入念な現場ヒアリングという要件定義が行われるわけですが、ここに罠が潜んでいるのです。
何を良しとするのか、システムの「筋」を考えずに、いたずらにいろんな人の「要望」や「条件」だけを聞いて形にしていくと、一体、何が起こるでしょうか?
大抵の場合、誰の「要望」も満足しない、中途半端なものが出来上がることは目に見えていますよね。それだけならまだしも、最も悪いことは、そのシステムが一体、何を目指して動いているのか、それが稼働した結果が一体、企業の成功にどう結びつくのか?を誰も理解できないものになってしまう点です。
確かに、高邁な理想を掲げたからといって、必ずしも現実はうまくいかないものです(奇しくもオバマさんも演説で語っていましたが)。目指した通りの結果を出せないこともあるでしょう。しかし、「思想」のないシステムは最悪です。
何を良いと考えてそういう結果を出したのか?という判断の根拠がないシステム。なぜそうしたの?という問いに対して「Aさんの要望です」「Bさんの要望です」という以上の答えを持ち合わせていないシステム。あなたは、そのようなシステムが自分の繁栄のために貢献してくれる、と信じることができるでしょうか?
もしあなたが、今、何らかのシステムの企画や開発に携わっているのであれば、今一度、自問してみてください(あるいはベンダーさんに聞いてみましょう)。「そのシステムに筋は通っているのか?」と。
システムの議論になると往々にして「どのように?」ばかりに目が行きがちですが、重要なのは、
「どのようなプロセスでアウトプット(たとえば配送計画など)を作り上げるのか?」
ではなく、
「そもそも何を目指してアウトプットを作ろうとしているのか?」
ということです。
誰がシステムの「モラル」を決めているのか? それ以前にそもそも、そのシステムに「モラル」はあるのか? そのシステムに魂は入っていますか? これからのシステムに欠かすことのできない問いです。
++朴成浩
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